資源が豊富なマグネシウムと紙から低環境負荷の新型電池を開発
次世代のエネルギーデバイスには、高出力・高容量だけでなく環境負荷が低いことも求められます。しかし一般的な電池には、環境負荷が高くて資源量に制限のある様々な重金属やプラスチックが材料として多用されてきました。
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の藪浩教授(主任研究者、同研究所水素科学GXオープンイノベーションセンター副センター長)、電力中央研究所の小野新平上席研究員、東北大学発ベンチャーのAZUL Energy株式会社(宮城県仙台市、伊藤晃寿社長)、英国のスタートアップであるAMPHICO(アンフィコ、登記名:Amphibio Ltd、英国ロンドン、亀井潤社長)からなる研究グループは、燃料電池と金属空気電池の一種であるマグネシウム空気電池(注3)を独自の安全な電極触媒と紙をベースに作製し、環境負荷の高い重金属やプラスチックをほとんど使わず、塩水という身近な材料をトリガーにウェアラブルデバイスを駆動するのに十分な1.8 Vの電圧と100 mW/cm2以上の出力、968.2 Wh/kg(Mg)の容量を示す高性能な「金属空気紙電池」を実現しました。
本電池は塩水をトリガーとして発電します。この特徴を活かし、コロナウイルス感染に伴う血中酸素濃度の低下を監視するウェアラブルなSpO2測定器の電源として、また、溺れた際に要救助者の位置を特定するGPSセンサーを搭載したスマートライフジャケットの電源として利用できることを実証しました。
本電池は高性能でありながら、土壌や海水中に豊富に存在するマグネシウム、安全な触媒、紙、炭素など、環境に優しい素材で構成されているため、廃棄時の環境負荷が非常に低く安全であり、様々なウェアラブルデバイスや非常用電源などへの応用が期待されます。
本研究成果は、現地時間の3月18日に英国化学会による科学誌RSC Applied Interfacesのオンライン速報版に掲載され、同誌のoutside coverにも採択されました。
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