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ご挨拶

東北大学バルク軟磁性材料研究拠点
共同代表
岡本 聡


 軟磁性材料は、電力変換やモーターなど身の回りで多く利用されており、半導体などと並んで現代社会を支える基盤材料の一つに挙げられます。ただし、かつては日本のお家芸ともいえる研究分野でしたが、研究者が他分野に流れるなどしたため研究開発の中心は企業に移り、この20年ほどは基礎研究が停滞していました。その一方、気候変動問題やエネルギー価格高騰に加えて、電気自動車をはじめとするモビリティーの電動化の動きが全世界で加速しており、エネルギー利用の高効率化が極めて重要かつ切迫した社会課題となっています。そのよう状況を受けて、令和3年に文部科学省「革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業」がスタートし、東北大学では超低損失バルク軟磁性材料の開発および基礎研究を進めています。その成果を還元し、関連する東北大学の研究者と企業との産学連携を推進するため、同年に東北大学バルク軟磁性材料研究拠点を設立致しました。
 東北大学は軟磁性材料に関する長い研究の歴史と知の蓄積があり、これをベースに最先端の計測技術・理論に基づいた解析とデータ科学に基づいた最適化・予測手法を駆使した軟磁性材料の研究開発を進めていています。日本には軟磁性材料および軟磁性デバイスに関する優れた技術を有する中小含めた企業が沢山ありますが、本研究拠点との共同研究を通じて、課題解決や新たな価値創造につなげることを目指しています。




東北大学バルク軟磁性材料研究拠点
共同代表
遠藤 恭


 脱炭素社会の実現に向けて、モビリティに関連する分野では単なる電動化にとどまらず革新的な技術を開発し早期に社会実装へ取り組むことが重要となっています。その分野の一つである半導体分野においては、次世代パワー半導体(SiC,GaN等)の研究開発や、それらを利用したデジタル機器の研究開発が進められています。これらの機器を実用化するためには、インバータやスイッチング電源といった各種電子機器の高周波化と高エネルギー密度化が必要不可欠です。したがって、それらの電子機器を下支えする受動素子(トランス,インダクタ等)を構成する高周波軟磁性材料においては、高周波帯域における損失低減と、素子の小型化による高飽和磁化が要求されており、そのためには新たな材料の研究開発に取り組んでいく必要があります。しかしながら、軟磁性材料の研究阿開発は著しく研究が進展しているスピントロニクス材料と硬質磁性材料と比べると30年近く停滞気味となっております。
 このような現状を打破し、軟磁性材料の研究開発を産官学により進展させていくために、軟磁性材料に関連する研究の歴史と知見を有している東北大学においてバルク軟磁性材料研究拠点を設立しました。本拠点では、軟磁性材料の研究開発のみならずそれに関連するデバイスならびに計測技術の開発についても、軟磁性に関連する大学研究者と企業研究者とで学術指導・共同研究を通じて密接に連携しながら推し進めていきます。



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